ビジョナリー・カンパニー2 メモ3
第三章 だれをバスに乗せるか まで読んだ。
飛躍を遂げた企業では、まず人を選び、不適切な人を降ろし、次にどこに向かうか決めていた。 この順序、まず人、つぎにやることというのが一環して見られたパターンとのこと。 長く続けてきた製紙工場を売却する決定をした後も、経営陣全員に残ってもらった例などが挙げられていた。
飛躍を遂げなかった企業では、天才を皆で支える方式が多かった。
人事決定で厳格(!=冷酷)になるための方法
- 疑問があれば採用しない。人材を探し続ける。
- 人を入れ替える必要があれば行動する。
- 最高の人材は最高の機会の追求にあてる。最大の問題の解決にあてない。
最善の答えを探し出すために活発に議論し、方針が決まれば利害関係を超えて協力する。
経営陣の報酬と飛躍には関係がなかった。 人材は最も重要な資産ではない。「適切な」人材が最も重要な資産。適切な人材は専門知識、学歴、業務経験より、性格と基礎的能力によって決まる。
さて自身・自社を振り返るとどうだろうか?
ビジョナリー・カンパニー2 メモ2
今日は第二章 野心は会社のために 第五水準のリーダーシップの最後まで読んだ。
章末にまとめがあるが、そのさらに簡略版。
- 偉大な実績の企業への転換点では第五水準のリーダーに率いられていた。
- 第五水準のリーダーは個人としての謙虚さ、職業人としての意志の強さをあわせもつ
- 第五水準のリーダーは次の世代でさらに成功を収められるようにするが、第四水準のリーダーは後継者が失敗するようにする(それによって自身の能力が示される)ことがある
- 第五水準のリーダーは成功したときは窓の外に要員を見つけ、失敗したときは鏡を見て自分に責任があると考える。比較対象企業のリーダーは逆が多かった。
- 有名で非凡な指導者の招聘は偉大な企業への飛躍・持続と逆相関の関係にある
- 第五水準のリーダーシップは観察から導き出されたものである
さて、前回時間があったらやってみたいと思っていたこと、偉大な企業たちが直近どんなようすなのか調べてみることにしよう。 本が書かれてから20年近くたっている。 飛躍はまだ持続しているのだろうか?それとも時代の波に逆らえず失速しているのだろうか?
飛躍した企業として挙げられているのは次の通り。 かっこの中は転換時期
- アボット (1974)
- サーキット・シティ (1982)
- ファニーメイ (1984)
- ジレット (1980)
- キンバリー・クラーク (1972)
- クローガー (1973)
- ニューコア (1975)
- フィリップ・モリス (1964)
- ピットニー・ボウズ (1973)
- ウォルグリーンズ (1975)
- ウェルズ・ファーゴ (1983)
こうしてみると転換時期は十分に古い。 転換時期から15年は好調な時期が続いたということで、書籍に載ることになったのだが、その後はどうか?
S&P 500
まずは比較対象として S&P 500。
比較対象自体が 2000 年からで見ると 3.0 倍になっている。 比較されるほうも大変だ。
アボット
2000年から 8.2 倍に成長している。すごい。
サーキット・シティ
2008年に上場廃止された様子。
Wikipedia によると転落の様子は次のように書かれている。
しかし1990年代後半になると、自動車販売や金融分野など経営の多角化乗りだし失敗。ライバルとなるベスト・バイが一等地に店舗を構え、薄利多売によるインセンティブを顧客に還元する戦略が軌道に乗ると、次第にじり貧を余儀なくされた。
2000年ごろから業績が落ち込み始め、2001年には売り上げでベスト・バイに抜かれ、家電の売上高ではベスト・バイ、ウォルマートに次ぎ3位となった(2009年の破綻関連のニュースでは(ウォルマートが家電専門でないためか)「全米家電小売2位」と報道されている)。
従来の手法に固執する経営陣は、さらに小型店舗を拡張する戦略を採り、2003年には650店舗にまで成長するが売り上げは減少。2004年には、ライバルのベスト・バイから社長を引き抜き、店舗の整理・縮小による均衡型の経営を模索した。
社長の引き抜きをやったが、再飛躍のきっかけにはならなかったようだ。
ファニーメイ
これかな?
上場廃止になった模様。
ジレット
2005年に P&G に吸収合併。
キンバリー・クラーク
2000年と比べると2.3倍となっている。
クローガー
4.9 倍。
ニューコア
直近、スゴイ吹き上がり方をしているので、安定的な成果とは言えないが、2000年から 7.6 倍。
フィリップ・モリス
NYSE: PM。 私も昔吸っていた時期がある。 なぜか 2008年までしか遡れなかった。
ピットニー・ボウズ
ピツニーボウズと訳すのが主流なのだろうか?
NYSE: PBI。
2000年から 0.16倍。冴えない。
ウォルグリーンズ
ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス - Wikipedia
アライアンス・ブーツと統合して、ウォルグリーン・ブーツ・アライアンスと名前が変わっている。
ウェルズ・ファーゴ
NYSE: WFC。 2000年から 2.4 倍。
まとめ
2000年から 2021年というスパンで見ると、本書中の飛躍した企業群は特別優秀な成績を収めているようには見えない。 輝いたが一時期続いたとして、それが永遠に輝き続けるということはないということだろう。 とはいえ、輝くための努力をすることは無駄ではないと信じたい。
ビジョナリー・カンパニー2 メモ 1
ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則を読み始めた。 書籍自体は 2001年のもの。 20年前のものということで古典に当たると思うが、普遍的な発見が語られているのであれば現代でも通用するはず。
まず本のテーマが興味深い。
良い企業は偉大な企業になれるのか、どうすれば偉大な企業になれるのかという疑問、そして、どの組織にも適用できる普遍的な答え、時代を超えた答えの追求が、本書のテーマである。
著者は好奇心に駆られてこの疑問に答える道を選んだと述べている。
「偉大な企業」の定義は、15年にわたって株式運用成績が市場並み以下の状態が続き、転換点の後は一変して、15年にわたって市場平均の三倍以上になったこと、としている。ただし、産業全体として同じパターンを描いている場合は除外している。 つまり投資していたらインデックスファンドに投資するより3倍以上儲かるように変身した企業が対象ということだ。
飛躍した企業に挙げられていた企業についてはほとんど知らない。。 ジレット、フィリップ・モリス、ウェルズファーゴはわかるが、それ以外は知らない企業だった。
本が書かれてから20年が経過している今なら、偉大な企業のその後を調べることもできる。 今度やってみよう。
偉大な企業へ飛躍した企業を調べていく上で「吠えなかった犬」つまり、直観に反してやっていなかったことがいくつかリストアップされている。私の気になったものは次。
・飛躍した企業は、偉大になるために「なすべきこと」に関心を集中させたわけではなかった。それと変わらぬほど、「してはならないこいと」と「止めるべきこと」を重視している。
・飛躍した企業は変化の管理、従業員の動機付け、力の結集にはほとんど注意を払っていなかった。条件が整っていれば、士気、力の結集、動機づけ、変化といった問題はほぼ消滅する。
なすべきことに関心を集中させることと飛躍とは関係がないというのは面白いし、チェンジマネジメント、集中、モチベーション管理も同じく飛躍とは関係ないという。 そういわれると、何が違うのか気になるし、この後を読むのが楽しみになってくる。
飛躍を指揮したリーダーは、万事に控えめ、物静か、内気といった特徴を持ちながら、同時に会社を偉大なものにするには熱狂的ともいえる意欲を持ち、何でもするという意思を持つ。自分を偉大にするためではなく、会社を偉大にするためというのが偉大な企業の経営者の特徴の様だ。 そのような人たちのことをこの本では第五水準の指導者と呼んでいる。
筆者が研究の早い段階で「経営者を無視しよう」と主張していたにもかかわらず、無視できないほどの違いが調査から明らかになった点は面白い。
各水準は次のように定義されている。
- 第一水準: 有能な個人
- 才能、知識、スキル勤勉さによって生産的な仕事をする
- 第二水準: 組織に寄与する個人
- 組織目標の達成のために自分の能力を発揮し、組織の中でほかの人たちとうまく協力する
- 第三水準: 有能な管理者
- 人と資源を組織化し、決められた目標を効率的に効果的に追及する
- 第四水準: 有能な経営者
- 明確で説得力のあるビジョンへの支持と、ビジョンの実現に向けた努力を生み出し、これまでより高い水準の業績を達成するよう組織に刺激を与える
- 第五水準: 第五水準の経営者
- 個人としての謙虚と職業人としての意志の強さという矛盾した性格の組み合わせによって、偉大さを持続できる企業を作り上げる
キンバリー・クラークを再編したダーウィン・スミスの例では、中核事業のコート紙の製造販売では偉大な企業になれないと製紙工場を売却し、消費者向け事業に売却代金を振り分けたストーリーが紹介されている。これが万事に控えめといっていいのだろうか。かなりの大ナタを振るっているように見える。外部に向けて喧伝しなかったという意味だろうか。
比較対象企業では、第四水準の経営者が出てくる。第四水準と第五水準との大きな違いは、第五水準の経営者では経営者が一線を引いた後に業績が傾かないこと。持続できる企業を作り出すことに力を注ぐもののことを第五水準と呼んでいるので、ある意味では定義通りかもしれない。
幹部の役割
「エンジニアのためのマネジメントキャリアパス」8.1 技術系の経営幹部の肩書と役割には、ごく一般的な幹部の役割として次のものが挙げられている。
- 研究開発
- 技術戦略・ビジョナリー
- 組織化
- 執行
- 技術部門の大概的な「顔」
- 社内の技術インフラとその運用
- 事業化
なるほどなるほど。役割の整理としてわかりやすい分類だと思う。
さて、肝心の CTO はどう整理されているだろうか?
まずCTOではないもの
- 技術系の役職ではない
- 技術部門のランクの最上位ではない
- エンジニアがそのまま昇進を続けて行き着く先の最終目標ではない
- コード書きやアーキテクチャ、奥深い技術系のデザインをこよなく愛する人々が一般に楽しめるような職種ではない
では、なんであるか?実際の職責が千差万別であることを認めながらも次のように定義している。
「CTOとは、その会社が現在の成長段階で必要としている戦略的技術系幹部」
「戦略的」という言葉には「長期的視点に立って考えを巡らし、事業の未来と、それを可能にする要素とを計画する作業を支援する仕事」であるという想いが、「幹部」には「戦略的な思考の成果を実現、運用可能にする作業を支援する仕事」であるという想いが込められているそうだ。
なかなか抽象的であるが、言い表そうとしているものの輪郭は理解できる。 より良いCTOとは、より良い戦略に基づき、広範な領域で計画を支援することができるCTOということになるだろうか。
2020年Q1の目標
2020年が始まりました。
「一年の計は元旦にあり」という言葉があります。 私もそれに倣って元旦に一年の目標を立てたことがありますが、年の終わりまで覚えていたことは一度もありません。 どうやら私にとって一年の目標というのは長すぎるようです。
というわけで今年は三ヶ月に1度目標設定をすることにしました。 妻にも声をかけて一緒に設定してみました。
目標のうちの一つは、CTO・経営者としてレベルアップするために読書をすることです。
一冊は読みかけでほったらかしになっている「エンジニアのためのマネジメントキャリアパス」を読み切ること。 それに加えて二冊読みたいと思っています。 一ヶ月一冊ペースは遅いかもしれませんが、私は本を読むのが遅いのでそれくらいできればよいかと思っています。 関係ありませんが、読書スピードといえば Netflix の番組でビル・ゲイツは本を一時間で150ページ読むと言っており、驚愕しました。
残りの二冊はこれから探すつもりです。 良い本に巡り会えると良いのですが。
BIP 34 ビットコインブロックのバージョンアップ(aka. softfork, v1 → v2)
Segwit なかなか有効化されないなあ…ところでビットコインのバージョンアップはどのように行われるのだろう?と疑問に思ったので BIP を眺めてきました。BIP とは Bitcoin Improvement Proposal の略で、ビットコインの改善提案ですかね、がまとめられているものです。GitHub で公開されています。
Segwit は BIP 9 の手順でデプロイされるようですが、BIP 9 から BIP 34 への参照があったので先に BIP 34 を見てみました。
BIP 34 は
Block v2, Height in Coinbase
ということで、バージョン1からバージョン2へバージョンアップする際の手順を示した BIP です。バージョン2では scriptSig という場所の最初に coinbase の height を入れることにしたようです。 BIP 34 には実際の実装を行った pull request へのリンクも貼られています。コードを見ると理解が深まります。良い。
各ブロックにバージョンが埋め込まれており、マイナーの間にどれくらいバージョン2以降が浸透しているか(過去nブロックにおけるバージョンを確認する)によって挙動を変えています。
- バージョンアップ率 75%以上: 過去1000ブロック中、750ブロック以上がバージョン2以降である
- バージョン2以降であり、scriptSig の最初に height を持っていないブロックは捨てる
- バージョンアップ率 95%以上: 過去1000ブロック中、950ブロック以上がバージョン2以降である
- バージョン1のブロックは拒否する
さて Decentralize で皆が好き勝手にやっているビットコインネットワークでバージョンアップが成功するのでしょうか?ブロックのバージョンはブロックヘッダの最初の4バイトです。ブロックヘッダを書くのはマイナーなので、マイナーがバージョンアップするか、バージョンアップするモチベーションがあるかが焦点になります。
旧バージョンでのブロック受け入れ判定のコードを見ると、ブロックのバージョンによって拒否はしていないようです。 従ってバージョンアップ率ごとのブロック受け入れ状態は次のようになります。
- 0% ~ 75%
- 旧バージョン利用マイナー: ブロックは受け入れられる
- 新バージョン利用マイナー: ブロックは受け入れられる
- 75% ~ 95%
- 旧バージョン利用マイナー: ブロックは受け入れられる
- 新バージョン利用マイナー: ブロックは受け入れられる
- 95% ~ 100%
- 旧バージョン利用マイナー: ブロックは受け入れられない
- 新バージョン利用マイナー: ブロックは受け入れられる
旧バージョン利用マイナーはブロックが受け入れられない可能性が出てきます。 せっかく計算資源を消費してマイニングしたブロックが受け入れられないとマイナーとしては何をしているかわかりません。バージョンアップするモチベーションはありそうです。
ところでバージョンアップ率が95%のとき、古いバージョンを動かしている5%のノードではバージョン1のブロックを受け入れ、その他大勢は受け入れないことになります。これは問題にならないのでしょうか? 一時的にはバージョン1のブロックが先頭に付いた状態のチェーンを5%のノードが採用する状態が出来ますが、マイニングパワーの95%が新しいバージョンとなっているので、すぐにバージョン1のブロックを含まないチェーンの方が長くなります。 ビットコインでは最長のチェーンを採用することになっているので、バージョン1のブロックを含むチェーンは採用されません。
今回は BIP 34 を見ましたが、BIP 9 もそのうち読みたい。どうやら複数の機能が並行で試せるようになっているみたい(?)
bitcoin アドレスで使われている base58 encoding
Bitcoin ではアドレスや秘密鍵の文字列表現に base58 encoding を使います。
Base58 - Wikipedia, the free encyclopedia
base64 は良く見かけますが、base58 は bitcoin で初めて見ました。
base64 は a-z, A-Z, 0-9, +/
の 64文字でエンコーディングします。
base62 は base64 の文字から +/
の2文字を除いた 62文字でエンコーディングします。
base58 は base62 の文字から、0
ゼロ、O
大文字o、I
大文字i、l
小文字L の6文字を除いた 58文字でエンコーディングします。
除く理由は読みづらいから。
0Oo
(ゼロ、大文字o、小文字o), Il1
(大文字i、小文字L、数字1)あたりはフォントによっては見間違えやすいです。
紙に印刷した秘密鍵を読み取るときに間違えて悲しい思いをしないように、というサトシの心遣いでしょうか。
なお、58文字の並べ方にいろいろあるらしく、「base58 で」と言っただけでは一意にエンコーディングが定まらないらしい。
- Bitcoin アドレス:
123456789ABCDEFGHJKLMNPQRSTUVWXYZabcdefghijkmnopqrstuvwxyz
- Ripple アドレス:
rpshnaf39wBUDNEGHJKLM4PQRST7VWXYZ2bcdeCg65jkm8oFqi1tuvAxyz
- Flickr の URL に使われているやつ:
123456789abcdefghijkmnopqrstuvwxyzABCDEFGHJKLMNPQRSTUVWXYZ
Bitcoin と Flickr のやつは自然にみえますが、Ripple のやつは一見おかしな感じですね。
ランダムなようにも見えますが、よく見ると JKLM
PQRST
VWXYZ
などアルファベット順で連続した文字列も見えます。
いったいどういう順番になっているのでしょう?
Bitcoin と Ripple は暗号通貨ですが、Flickr の URL にも使われているのですねえ。 Flickr の解説 blog が 2009年4月13日にかかれており、bitcoin の論文が2008年10月31日なので、半年くらい Flickr のほうが遅いですか。 当時 bitcoin はまだまだ知名度が低かったのではないかと思いますが、Flickr の人たちは bitcoin を参考にして採用したのでしょうか?